概要
■概要
東京大学拠点では、開発、環境、医療を主要テーマに掲げる。現代的な課題を整理しつつ、地域性とテーマ性に通底する要素やその関係性を洗い出し、体系的かつ総合的な視座を構築することを目指す。現代的課題として見通しているのは、環インド洋地域を射程とした①持続型生存基盤の模索、②都市化及び資源・環境問題、③身体・生命に関わる知の形成・循環と人類社会の再生産である。環インド洋地域と関わる社会の諸事例を検討しつつ、学際的観点とグローバルに起こっている政治経済や文化の流動性を加味しながら、これらの課題を捉え直す視座を確立する。
■内容
開発や医療、「自然環境」の管理・保全などは、一般には、西洋近代が生み出し、技術合理的な普遍性を根拠に普及した近代的な制度とみなされてきた。しかし、開発・医療・環境にまつわる知識や制度は、帝国がアジアやアフリカの植民地の生態環境や人々の生きる現実と遭遇し、これらを統治・統御しようとする試行錯誤や非対称的な相互作用のなかでつくられてきた経緯をもつ。またこれらの制度は、国民国家を主体とした導入の過程においても都度、ローカルな要素や条件、実践と結びつきながら調整され、改変されながら普及してきた。このように開発や医療、そして環境をめぐる科学的知識や制度は、一方的に西洋近代から非西洋へ移植されたというよりは、接触や交渉のなかで形をとりダイナミックに変化するものだといえる。
本研究は、上述したようなダイナミズムや制度の複数性を念頭におきながら、環インド洋と関わる地域における開発、環境、医療をめぐる現代的課題とこれへの(創造的)対処について、分野横断的あるいは地域間比較の観点から検討する。具体的には、生存基盤の確保や都市化、資源・環境問題、人類社会の再生産、土地や自然資源の公正管理、新たな国家システムの下での国際関係、グローバルガバナンス、人間の安全保障、難民移民問題、グローバルな経済不均衡の是正といった課題について、具体的な社会の諸事例から検討しつつ、そこでの問題や人々の対処を条件づける/可能にする知識・技術・制度を明らかにする。普遍的な装いをもった知識・技術・制度が時空間を超えて流通し、人々にとっての現実を形づくっていく有様を捉えると同時に、生態学的な条件や歴史的に蓄積された文化的要素との絡み合いのなかで、これらの知識・技術・制度自体が新たな要素と結びつきながら創造的に変容していく過程やその社会的・政治的帰結をも捉えることで、開発や環境、医療をめぐる持続性とその課題について、新たな視座や想像力を得る。また、これらの課題に向き合うための方法論に関しても学際性と時代性を生かし、デジタル媒体を扱った情報収集や大規模データ情報処理等、最新のメソドロジーもどん欲に取り入れた取り組みを目指す。